弦楽合奏曲解説(第10回定期演奏会)
ジョプリンThe Entertainer ~弦楽器のお話~
S.ジョプリン .ジョプリン(1868-1917) 編曲:藤田めぐみ
「The Entertainer」はアメリカの「ラグタイムの王」と呼ばれたスコット・ジョプリンによって1902年に作曲されたピアノ曲です。
ラグタイムは、19世紀から20世紀にかけてアメリカで流行した音楽です。メロディーラインとベースラインの拍のずれにより、従来のクラシックとは違った「ずれた・遅い」リズムと思われたことからragged-time略して「ragtime」と呼ばれるようになったといわれています。
ラグタイムとジャズはどちらも黒人の音楽をルーツとしています。
ジャズはアドリブやスウィングすることが特徴ですが、ラグタイムは装飾音を用いたりタイミングをずらしたりといったアドリブが入るものの基本は楽譜に忠実な演奏をします。
S・ジョプリンはアメリカ南北戦争後の1868年にテキサス州リンデン近くで黒人奴隷農夫の父ジャイルと母フロレンスの次男として誕生。(6人兄弟)
8才頃から本格的に音楽を習い始め、10代でダンス音楽の演奏家となりました。27才になった年に黒人のためのジョージ・R・スミス大学で音楽を学び、クラシックとアフリカ系アメリカ人のハーモニーとリズムを結びつける音楽を探求していたといわれています。31才になった彼は自身が生み出したラグタイムの作品を次々と発表。
今回の演奏曲「The Entertainer」は34才の時の作品です。存命中は音楽界における認知度は低かったといわれていますが、没後半世紀以上経った1973年にアメリカ映画《スティング》の中で彼の音楽「The Entertainer」が使われ大ヒット。音楽部門でアカデミー賞を受賞。1976年には彼の功績が讃えられピューリッツァー賞(特別賞)が贈られました。
(編曲者より)
4分の1世紀位前の事です。テニスで足を骨折し 寝たきりを余儀なくされた時の、副産物です。音楽教室の楽器紹介に、楽しめて勉強になる曲、を常々考えていました。だから♪楽しんでいただけたら、嬉しいです!
パッヘルベル カノン
パッヘルベル(1653-1706)
作曲者、ヨハン・パッヘルベルは、バロック 時代の1653年、ドイツに生まれました。南ドイツ、 オルガン楽派の最盛期を支えた、優れたオルガン 奏者、教師でありました。様々な場面でよく耳に するこのカノンは、もともと「3つのヴァイオリ ンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」の 一曲目です。
カノンとは、簡単にいうと、輪唱で、 ヴァイオリンが、3つに分かれ、同じメロディー を順番に展開して変化させていきます。通奏低音 (チェロ、コントラバス、チェンバロ)は、最初から最後まで同じことを繰り返していきます。今回、 ヴィオラは、ピチカートで演奏に参加していきます。
バッハ 二つのヴァイオリンのための協奏曲
J.S. .バッハ(1685-1750)
バッハのドッペルコンチェルトという呼び方で も広く親しまれているこの曲は、彼の残したヴ ァイオリン協奏曲の中で3番目のものです。2本の独奏ヴァイオリンが音域の差こそあるもののほぼ 対等に絡み合い、全楽章にわたって多彩な響きをつくり出します。
本日は、できるだけ自前でやろうということで 団員から独奏者を出しました。第2独奏は筆者が務めさせていただきます。未熟な演奏で申し訳ないのですが、仲間達と共に積み重ねてきた練習の成果を皆さまにお見せできるよう頑張ります。カノ ンに引き続き通奏低音を支えるチェンバロの音色にもご注目(耳)下さい。
モーツアルト ディヴェルティメント K136
W.A.モーツァルト(1756-1791)
ディヴェルティメントは18世紀中頃、ハイドン、モーツァ ルト時代に、王侯・貴族が食事や社交場で演奏する ためにできた明るい楽しい音楽で、楽器編成や曲構成に特定の規則はありません。19世紀に一旦廃れましたが20世紀に復活して、ストラヴィンスキー、バルトーク などが作曲しています。ディヴェルティメントは日本語で 「嬉遊曲」といいますが、昔の人はうまい訳語を作ったものです。
今回演奏するK.136モーツァルトが16歳時に作曲したもので、
・第1楽章:アレグロ ニ長調 4/4拍子、ソナタ形式
・第2楽章:アンダンテ ト長調 3/4拍子、ソナタ形式
・第3楽章:プレスト ニ長調 2/4拍子、ソナタ形式
で構成される弦楽4重奏曲で、弦楽器を学ぶ人なら誰でも一度は弾いたことがある、モーツァルトのディヴェルティメント中でいちばん有名な曲です。
レスピーギ リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲
O.レスピーギ(1879-1936)
イタリア近代の作曲家レスピーギは、交響詩「ローマの松」など三部作で知られています。
ボローニャで生まれ、音楽教師の父親からヴァイオリンの指導を受けて地元の高等音楽院に進みヴァイオリン・ヴィオラ・作曲を教わりました。卒業後ヴィオラ奏者として活動しながらリムスキー・コルサコフなどから作曲を学び、ローマのサンタ・チェチリア音楽院教授に就任しました。
古い音楽に興味を持っていましたが、16~7世紀のリュート曲の楽譜を図書館で見つけ、これをもとに標題の3つの組曲に編曲しました。レスピーギは「原曲の持つ気品と香気を失うことなく原曲の時代と性格に適した和声を配し、管・弦楽の衣を着せた」と言っています。
今回演奏するのはその第3組曲で、弦楽合奏による4曲からなっています。
・第1曲:イタリアーナ・・・作曲者不明の曲で、リュートを再現したと思われるチェロのピッチカートで始まる哀愁漂う作品です。
・第2曲:宮廷のアリア・・・原曲はフランスの作曲家の曲で、始めと終わりにヴィオラの美しいアリアがあります。
・第3曲:シチリアーナ・・・シチリア島起源の舞曲で作曲者は不明です。抒情的で優雅な曲です。
・第4曲:パッサカリア・・・イタリア人作曲家の「スペイン・ギター音楽集」中の1曲を素材とした堂々たる変奏曲です。パッサカリアは17世紀ごろ、イタリア、スペインなど、ヨーロッパ中で流行した舞曲です。
*日本では1876(明治9)年滝廉太郎が生まれています