弦楽合奏曲解説(第11回定期演奏会)
モーツァルト ディヴェルティメント変ロ長調 K.137
W.A.モーツァルト(1756~1791)
本日最初にお聴きいただくのはモーツァルトの書いたディヴェルティメント(嬉遊曲)の中の一曲です。
モーツァルトのディヴェルティメントといえば何をおいてもケッヘル136番、137番、138番の3つ。この3曲は作曲当時、16歳のモーツァルトが住んでいたオーストリアの地名をとって、まとめて「ザルツブルクシンフォニー」と呼ばれています。あまりにも有名で、順に1番、2番、3番と呼ぶこともあるぐらいです。
ただ本日演奏するのは真ん中の第137番で、3曲の中では最もマイナーな曲です。例えば最も有名と思われる136番の冒頭の旋律は下の譜面の通りですが、ああ、これね! と思われる方も多いでしょう。
138番の冒頭の旋律はこれです。
これも、ああ。と思い出された方も多いかと思います。 それでは137番のはじめはどんな旋律でしょうか。答えは開演後に。
ヒント:他の2曲は元気よく軽快に始まりますが、この曲はAndante(歩く速度で)からゆっくり開始し、第二楽章、第三楽章と進むにつれてテンポが速くなっていきます。このような形式は非常に珍しいようです。弾く方としては、出だしがしっとりしていると結構難しいのです!
チャイコフスキー 弦楽セレナード ハ長調 作品48
P.I.チャイコフスキー(1840-1893)
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(露:Пётр Ильич Чайковский [Peter IlyichTchaikovsky] 1840年5月7日~1893年11月6日ロシア)作曲。彼の代表作のひとつである。この作品は、モスクワ音楽院に着任時からの親友アルブレヒト(チェロの教授)に捧げられ、1880年に作曲された、弦楽オーケストラ作品である。
この作品の前には有名な交響曲第4番、(1877-78)が作曲された。同年に、「イタリア奇想曲」、序曲「1812年」など、親しみやすい作品を残している。弦楽セレナードはハ長調という最も単純明快な調性で書かれ、第2楽章は1楽章の属調ト長調、第3楽章はその属調ニ長調、第4楽章の序奏が再びト長調、主部でハ長調に戻る、五度関係の構成を成している。
・第1楽章 Pezzo in Forma di sonatina; Andante non troppo - Allegro Moderato
「ソナチネ形式の小品」と題されている。日本ではその序奏が、『N響アワー』のオープニングや、もうずいぶん前になるが、某人材派遣会社の広告で使用され、「オオ! 人事」で、有名である。
・第2楽章 Waltz; Moderato (Tempo di valse)「ワルツ」
彼のソナタや交響曲の楽章にはワルツを用いている。ワルツのリズムに乗って、第1ヴァイオリンが有名なメロディーを奏でる。
・第3楽章 Elegie; Larghetto elegiaco 「哀歌」
印象的な序奏に始まり、各声部で淡々と旋律が三連符の伴奏で奏される。
・第4楽章 Finale (Tema russo); Andante - Allegro con spirito
第3楽章から続いた和音に続いて始まり、穏やかで感動的でドキドキする予感を与えるような序奏。「ロシアの主題によるフィナーレ」と書かれた楽章、ロシア民謡を旋律に取り入れている。 終結部に第1楽章の序奏主題が再現され、全曲を閉じる。
この作品はモーツァルト(1756~1791年)への敬愛から、書簡に「強い内的衝動によって書かれ、芸術的な価値を失わない」と記されている。「セレナード」とは「夕べの音楽」で、思慕する女性の家の窓辺で、敬愛の印として夕暮れに奏する音楽のことである。18世紀から19世紀に管弦楽の音楽形式として盛んに用いられた。この形式はモーツァルトによって完成に至った。
チャイコフスキーと時代を共にした、ドヴォルザーク(Antonín Leopold Dvořák(1841~1904年))はチェコ国民楽派を代表する作曲家であるが、やはり1875年「弦楽セレナーデ」作品22を作曲しており、その作品は次回演奏会で、当楽団が演奏予定であります。乞うご期待!